「便利になった」の先を聞く、導入事例の深掘り質問

更新日: | 監修:導入事例制作サービス ビズログ

「便利になりました」「対応が早くなりました」。取材でこう答えてもらえても、そのままでは何が変わったかを読者が想像しにくいことがあります。言葉を強く書き換える前に、どの場面を指しているのかを聞きます。

深掘りは、相手を追い詰める質問ではありません。取材する人が理解できていない部分を、具体的な出来事へ戻して確かめる作業です。大きな質問を繰り返すより、一度に一つの条件を聞くほうが、話を思い出してもらいやすくなります。

いつの場面か、何をしたか、どう変わったかを聞く深掘り質問の図
いつの場面か、何をしたか、どう変わったかを聞く深掘り質問の図
目次
  1. 抽象的な評価を、直近の場面へ戻す
  2. 選定理由は、必要になった背景まで聞く
  3. 成果を聞くときは、対象と比較条件を確かめる
  4. 沈黙を急いで埋めず、答えを誘導しない
  5. 深掘りを止める判断も持つ

抽象的な評価を、直近の場面へ戻す

「連携がよくなった」と聞いたら、直近でそう感じた仕事の流れを聞きます。誰から依頼が来て、どの画面や資料を見て、誰へ返したのか。その順にたどると、以前のやり方との違いが見えてきます。

回答から次の質問へつなぐ例

回答:「担当者同士の連携がスムーズになりました」

追加質問:「最近、その変化を感じたのはどんな仕事でしたか」「以前は、相手に何を確認する必要がありましたか」「今は、その情報をどこで見られますか」

ここで「連携の効率化ですね」とまとめるのは、もう少し後で構いません。先に意味を決めると、顧客が言いたかった変化を狭める場合があります。説明を聞いてから、取材する側の理解を短く言い直し、合っているか確かめます。

選定理由は、必要になった背景まで聞く

「機能が充実していた」「支援がよかった」という答えは、そのままでは他社にも当てはまります。機能なら、どの業務で必要だったか、代わりの方法では何が難しかったかを聞きます。支援なら、困った場面と、どんな対応が助けになったかを聞きます。

比較した製品名を必ず公開する必要はありません。読者に役立つのは、候補を比べるときの条件です。既存の運用を変えずに済むこと、利用する人が迷わないこと、管理者の負担が増えないことなど、当時の優先順位を引き出します。

導入後の満足を、当時の選定理由へ遡って当てはめないようにも注意します。「今は便利だが、導入時にはそこまで想定していなかった」という話は、その区別を残して書くほうが経緯を正確に伝えられます。

成果を聞くときは、対象と比較条件を確かめる

「作業時間が半分になった」と聞いたら、何の作業について、どの期間と比べたのかを確認します。全体の業務時間なのか、一つの帳票の作成時間なのか。実測した値か、担当者の感覚かも分けておきます。

回答の例確かめたいこと
時間が短くなったどの作業で、誰の時間が、何を基準に変わったか
ミスが減った何をミスと数えたか、件数か割合か、対象件数は同じか
問い合わせが減ったどの窓口への、何の問い合わせか、別の窓口へ移っていないか
現場の評価が高い誰から、どんな言葉や行動で反応があったか

数値の根拠を当日答えられない場合は、後日確認する項目として残します。その場で数字を出すことを優先すると、話し手の記憶に負担をかけます。「確認できた範囲で掲載する」と伝え、無理に細かい数字を求めないようにします。

沈黙を急いで埋めず、答えを誘導しない

質問のあとに少し間が空くのは、思い出している時間かもしれません。すぐに選択肢を並べると、相手が近いものを選び、本人の表現が出なくなることがあります。一度待ち、それでも答えにくそうなら、時期や仕事の場面を限定して聞き直します。

「サポートの対応が早くて助かったのですね」と結論を含めると、異なる感想を言いにくくします。「どんな対応を受けましたか」「その対応で、次に何を進められましたか」と分けて聞けば、評価がよかった場合もそうでない場合も、具体的な話を受け止められます。

困ったことを聞く場合も、製品への不満を探す形に限りません。社内への周知、担当者の交代、導入時のデータ整理など、実際に手間がかかった部分を聞きます。そこに顧客自身の工夫があれば、同じ状況の読者の役に立つ材料になります。

深掘りを止める判断も持つ

守秘に関わる、他部署の話で分からない、記憶が曖昧など、これ以上聞いても正確な回答が得られない場合があります。質問を重ねて、推測で答えてもらわないようにします。分かる範囲を確認し、資料や別の担当者で確認できるか相談します。

原稿に必要な情報が揃ったら、同じ評価を何度も言ってもらう必要はありません。残った時間は、話の前提の確認や、まだ聞いていない運用の工夫に使います。深く聞くことと、長く聞き続けることは、同じではありません。

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